あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
愛する人の子供が欲しかった
「死んだ人間に何ができるって言うの? 死んだら、それで終わりなのよ! 」
怒りをむき出しにした里菜の視界に、受け付け嬢が使っていたハサミが目に入った。
サッとハサミを手に取った里菜は、先端を受け付け嬢に突き付けた。
突然突き付けられ、受け付け嬢は恐怖とお驚きで身を縮めた。
「…みんな死ねばいいのよ…」
ハサミを振り上げて、里菜は受け付け嬢に向かって振り下ろした!
が…。
ガシっと、誰かに手を掴まれて止められた。
「なにするの! 」
邪魔された事で怒りを露に振り向いた里菜の先にいたのは…ヒカルだった!
「これ以上はやめて下さい。…何人殺しても、貴女が幸せにはなれる事はありませんから…」
「はぁ? アンタに何が判るていうの? …私の幸せを邪魔しているのは、アンタよ! 私の運命の人を奪っておきながら、綺麗ごと言わないでよ! 」
ヒカルの手を振り払おうともがく里菜だが力強く握られていて振り払うことが出来なかった。
「…そうですか…。それでは、自分に一番責任があるのですね。…あの時、貴女を助けたから…」
はぁ?
何の事だか判らない里菜は目を座らせた。
「…貴女が中学生の時。歩道橋から転落した時…いち早く救急車を呼んだのは、自分です…」
「はぁ? なにを言っているの? あのとき、私を助けてくれたのは副社長よ! 」
「そうです、確かに彼もその場にいました。でも、第一発見者は自分と姉のヒカルです。そして、いち早く救急車を呼んだのは自分です」
まさか…。
信じられない顔をして、里菜はヒカルを睨みつけた。
「信じられないって、顔をしていますね千堂里奈さん」
後ろから声がして、里菜は振り向いた。
振り向いた先にいたのは輝樹だった。
「あんた…どうしてここに? 」
「先日、貴女にお見せした証拠を警察に提出したのです。そうしたら、なんだか騒がしい気配を感じましたので来てみました。城原コンサルティングは、隣のビルなので。こちらの様子も、見えるのです。大切な妹がいる職場なので、時々様子を見ておりました」
「証拠? あんなの、証拠になると思っているの? とっくに時効でしょう? 」
「いいえ、殺人事件に時効はありません。これ以上、貴女を野放しにしておくことはできませんから」
くッと苦虫でも噛んだような顔を浮かべた里菜。
「千堂さん、先ほど妹が言った事は事実です。これ、貴女が歩道橋から転落した時に写された動画ですよ」
携帯電話を取り出して、輝樹は動画を再生した。