あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…


 警察の調査が落ち着いたのは、午後を過ぎた頃だった。

 午前の仕事の遅れを取り戻しながら、聖龍はいつもと変わらないように仕事をしていた。

 コンコン。
「聖龍、入るぞ」

 奏弥がやって来た。

「聖龍、今日はそんなに根詰めなくていいから。早めに切り上げて、帰って構わないぞ」
「いや、こうゆう時こそ仕事をした方が気がまぎれるから」

 平然と仕事に打ち込む聖龍を見ていると、奏弥は胸が痛んだ。

「聖龍、城原さんのことなのだが」

 聖龍は仕事を手を止めて奏弥を見た。

「俺、初めから気づいていたから彼女が刑事さんだって」
「え? 」
「だって、あの喋り方は普通じゃないだろう? すごく堅物だし、いつも内に何かを秘めているようだったから。それに、千堂さんに対して妙に冷静だったから。納得できたよ」
「そうか。父さんも、薄々は気づいていた。彼女の父親は弁護士だったけど、真逆の道に進んだようだね」
「そうだね。でも…俺は、全く気持ちは変わらないから」

 奏弥はそっと微笑んだ。

「お前は、ほんとに翔次とそっくりだよ。日頃は表に出さない、芯の強さを持っている」
「それは、父さんも同じでしょう? 」
「私が? 」
「だって、ずっと母さんの事好きで想い続けて来たのは父さんじゃない。それに、父さんが一番辛かったと思うよ。香恋と香弥は父さんの実の子供なのに、あんな形で亡くなってしまったんだから」

 聖龍の言葉に、奏弥はグッと込みあがるものを感じた。

「俺は、失われた命と一緒にその人達の想いを受け継いでゆこうと思っている」
「そうだな」

 
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