あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
失われた命の先に受け継がれた想い…それは永遠に…
愛香里が歩いてくると。
「お帰り」
え? …
声がして顔を上げると、そこには聖龍がいた。
なんでここにいるの? と、驚いている愛香里に、聖龍はそっと微笑んだ。
「もう終わった? 」
そう聞かれて、愛香里はゆっくりと頷いた。
「お疲れ様。じゃあ、帰ろう」
そっと手を差し伸べて来た聖龍に、愛香里は申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「どうしたの? もしかして、家に帰るつもりだったのか? 」
「あ…いいえ、迷っていたところだったので…」
「そっか。じゃあ、うちにもどればいいだろ? 」
「あの…。怒っていませんか? 」
「え? 何を? 怒る事なんて、何かあった? 」
ギュッと唇を噛みしめた愛香里…。
「隠し事はなくなったって、言いましたが。…刑事である事を、隠していましたので…」
「ああ、その事ならなんとも思っていないよ。隠し事って、別に俺の事を裏切る真似をしていたわけじゃないだろう? 仕事上で、言えない事もあるだろうし。でも俺、初めから何となく気づいていたから」
「え? 」
「だって、愛香里はすごく生真面目だし。自分って言っているから。刑事って知って納得したから」
「…すみません…」
聖龍はそっと、愛香里を抱きしめた。
「もういいじゃないか、全て終わったんだから。後は、自分の気持ちに正直に生きて行く事だから」
「…はい…」
そのまま聖龍と愛香里は、手を繋いで駐車場へ歩いて行った。
駐車場まで行くと、車に乗った奏弥が待っていた。
「ごめん、父さんお待たせ」
「ちゃんとお姫様を、連れて来てくれた? 」
「ああ、大丈夫だよ」
奏弥と目と目が合うと、愛香里はそっと頭を下げた。
「お帰り…愛香里ちゃん」
名前を呼ばれるとキョンとなった愛香里。
そんな愛香里に奏弥はそっと微笑んだ。
そのまま車に乗り、愛香里は宗田家に行く事になった。
黙って出て行った愛香里だったが、使っていた部屋はそのままにしてくれていて着替えも増えていて驚いた。
「お帰りなさい、愛香里ちゃん」
笑顔で迎えてくれた凜に、愛香里はちょと気まずそうに会釈をした。
「驚いたわ、聖龍とこんなに親しかったなんて。でも嬉しいわ、また愛香里ちゃんが戻って来てくれたから」
「何も気兼ねしなくていいから、ここにいていいよ」
ポンと、奏弥は愛香里の肩に手を置いた。