あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
「俺は、ずっと後悔していたんだ。澪音と婚約して、本当に結婚したかったのかどうかって。澪音も迷っていたんだ、結婚していいかどうか。お互いが迷っていて、そんな時に澪音は事故で亡くなった。歩道橋の上から突き落とされ、走って来た車に引かれてだったからとても無残だったと聞いている。…それも、千堂さんが仕組んだことだったんだけどね…」
「そうですか。気持ちの整理がつかないまま、お相手が亡くなってしまっては行き場がなくなってしまいますよね」
「正直、人を好きになるのが怖った。だから、実家から離れて一人で暮らしていたんだけど。愛香里に出会ってから、ずっと胸が熱くて。傍にいて欲しいって思うよになって、これが本当に人を愛するって事なんだ気づいたんだ」
お墓からそっと愛香里に目を移した聖龍は、ちょっと真剣な目を向けて来た。
「愛香里…。俺と、結婚して下さい」
真剣な目を向けて、そっと頭を下げた聖龍。
結婚…。
そんな事を考えたことはなった。
でも…確かに、聖龍と一緒にいると安心する。
まだどこかで、凛太朗への影を求めているかもしれないけど…この人と、ずっと一緒にいたい…。
愛香里はそう思った。
返事を待って、頭を下げている聖龍に愛香里はそっと手を伸ばした。
その手に気づいた聖龍は、そっと頭を上げた。
「私も、同じ気持ちです。でも、私は家族と言うのを知らないので自信はありません」
「これから覚えて行けばいいじゃないか。俺達は、俺達で家族を作ればいいと思うよ」
「はい…」
愛香里の手をそっととって、聖龍はギュッと抱きしめた。
この温もり…。
これが本当に欲しかったものだと、愛香里は思った。
「それからこれ…」
聖龍のポケットから取り出されたあのキーホルダー。
それを見た愛香里は非常に驚いた顔を浮かべた。
「ごめんね、返すのが遅くなって。屋上で落としていったのを、俺が拾ったんだ」
「失くしてしまったと、すごく後悔していました。姉の形見だったので」
聖龍はキーホルダーをそっと愛香里の手に握らせた。
「これ、高校生の時初めて見てヒカルさんと話せてラッキーって思っていたから、よく覚えていたんだ。まさか、また出会えるとは思っていなかったよ」
「有難うございます」
「このキーホルダー。これからは、一緒に護って行こう」
「はい、そうします」
綺麗なキーホルダーが太陽に照らされ優しく輝き始めた。
そっと2人を見守ているような光に包まれて、聖龍も愛香里も幸せそうな笑みを浮かべていた。