あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…


 それからは、話はとんとん拍子で進んで行った。

 幸樹に聖龍との結婚を決めたこと話した愛香里。

 話があると連絡すると、社長室まで来てほしいと言われて向かった愛香里。

 結婚の話をするのだからと、愛香里は女性らしいワンピースとパンプス姿で幸樹の元へ向かった。


 ブルーのワンピースに白いカーティガンを羽織り、シックな白いパンプス姿の愛香里は歩いていると目立っていた。
 凜が可愛くメイクもしてくれて、プルっとした唇にピンクのリップを塗ってくれて。
 芸能人顔負けの可愛い姿になった愛香里。

 オフィスビルに入ってくると、他の会社の人達が愛香里に注目していた。

「誰? あの人」
「どこかのモデルさん? 」
「え? 女優さんかな? 」
「綺麗な人ね。あんな人、このビルにいたかしら? 」

 そんな声を聞きながら、愛香里は幸樹の待っている社長室へ向かた。


 赤い絨毯が敷き詰められたワンフロアの中心にある社長室。

 南向きの窓からは、暖かい日差しが入って来る。
 窓際には生き生きした観葉植物も置いてあり、落ち着いた茶色い壁紙に、高級木材のデスクに高級革の椅子。
 中央に来客用の白ソファーとガラスのテーブルが用意されている。

「愛香里、久しぶりだね」

 やって来た愛香里を、優しく迎えてくれた幸樹。

「勝手ばかりやってしまって、申し訳ございません。…赤の他人の私を、育ててくれたのに何も恩返しができなくて…」
「何を言っているんだい? 私は、愛香里が幸せになってくれたらそれでいいんだ。愛香里のお父さん、颯太君には随分とお世話になったし。沢山の恩を受けてきたんだ。そんな親友の子を引き取ることが出来て、私は世界一の幸せ者だと思っているよ」


 言いながら、幸樹は愛香里をソファーに座らせ向かい側に座った。

「宗田さんとも、同級生だったんだ。彼は、颯太君と同じ道に進んだけどね。同じ道に進んだだけ、彼は私より颯太君と随分親しかったようだね」
「はい。父が亡くなって、私を引き取ろうとしていたそうです。でも、先にもう養女縁組が決まっていたと話していました」

「宗田さんも、随分と辛い思いをして来たと思う。4人いたお子さんを、3人も殺されてしまったのだから。彼の弟も、射殺されたと聞いているよ」
「そのようですね。でも…長年続いた憎しみは、もう終わったと信じています」

「そうだね」
「あの…今日は、報告があるのですが」

 ん? と、幸樹は愛香里を見つめた。
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