あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
5年後。
桜舞い散る春がやって来て、重い上着が必要なくなった今日この頃。
「はーい、笑って」
小学校の校門前でカメラを構えている凜がいる。
校門の前には。
元気な男の子と女の子が、初々しい制服姿で立っている。
そしてその子達の両隣には、お父さんになった聖龍とお母さんになった愛香里が一緒に立っている。
聖龍は爽やかなブルーのスーツに身を包み、愛香里はピンク系のスーツに身を包んでいる。
5年間より、随分と可愛くなった愛香里は長い髪を後ろで束ねて上品なメイクをしてすっかり女性らしくなっている。
聖龍と愛香里はあれからすぐに入籍をした。
結婚式はしなくていいと愛香里は言ったが、一生に一度の門出だからちゃんと式をやろうと聖龍が言い出して家族だけで結婚式を行った。
だが、写真を写すと写真館の人が随分と気に入ってくれて、5年経過した今でも写真館のショーウインドーに飾られている。
元気な男の子と女の子は双子で、男の子は聖(せい)女の子は香(かおり)と名付けられた。
結婚式の後、直ぐに妊娠が判明した愛香里だったが母親になる事に自信がなく産む事を迷っていたが、聖龍や凜に励まされうう決意をした。
心臓移植をしていることから産むのは一人しか無理だと、医師から言われたそうだが一度に2人も来てくれた。
男の子と女の子の双子が来てくれるなんて夢にも思わなかったが、なんとなく男の子は凜太郎が生まれ変わって来たようで、女の子はヒカルが生まれ変わってきたように思えた。
カシャっと写真を写し終えると、聖が駆け寄って来た。
「今度はお爺ちゃんと、一緒に写真とりたい」
凛の隣にいた奏弥の袖を引っ張って、聖が校門の前に連れて行った。
「じゃあ、私はお婆ちゃんと」
香が凜の袖を引っ張って連れて行った。
聖も香もすっかり、凜と奏弥に甘えている。
そのおかげで、聖龍も愛香里も安心して仕事ができる。
聖龍は現在宗田ホールディングの社長へ就任した。
そして愛香里は聖龍の秘書として、週3日仕事をしている。
家庭を大切にしてほしいと聖龍が言っている事から、聖と香が帰って来る時間までには家に帰るようにしている。
校門の前で奏弥と凜と写真を写している聖と香を見ながら、聖龍と愛香里はギュッと手を握り合った。
「ここは、俺の母校なんだ。兄貴と昔、あの校門の前で一緒に写真を写した事を思い出したよ」
「そうなのね、私もここが母校なの。私が入学する頃、姉は卒業して中学生になったけど。入学式には来てくれて、家族で写真を写したわ」
「そっか、共通する思い出があったんだね」
「ええ、その思い出をまたあの子達が増やしてくれたのね」
手を握り合ってそっと見つめあう聖龍と愛香里。
「有難う、俺と結婚してくれて」
「お礼を言うのは私の方。貴女に出会わなかったら、きっと復讐だけを見ていたつまらない人生だったわ。あの子達にも会えなかったと思う」
「これからも、沢山思い出を作ろう」
「ええ、もちろんよ」