あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
気づかれないようにじっと里菜を見ていたヒカル…。
「…何が中学からの付き合い? 笑わせるな! 勝手に着けまわしている、ストーカーだろうが! 」
メガネの奥でヒカルの目が怒りに満ちていた…。
「あれ? 城原さん、今帰りですか? 」
声をかけられるとヒカルはハッと我に返った。
ゆっくりと振り向くと、そこには聖龍がいた。
「どうかしました? 顔色よくありませんよ」
「あ、いいえ。何でもありません」
ナヨっとした表情で笑いを浮かべたヒカル。
そんなヒカルを聖龍はじっと見つめた…。
「ねぇ、ここで会ったのもきっと偶然じゃないと思いますから。ちょっと、俺に付き合ってもらえませんか? 」
「え? い、いいえとんでもありません。先を急ぎますので、失礼します」
愛想笑いを浮かべて、ヒカルはそのまま早歩きで去って行った。
去り行くヒカルを見ていた聖龍だったが。
突然走り出してヒカルを追いかけて行った。
早歩きで歩いて行ったヒカルは、走って来る足音に気づいて聖龍が追いかけてきた事に気づき走り出した!
「ちょっと待って! 」
走り出したヒカルを聖龍は追いかけた。
走って追いかけて駅裏まではしてきた聖龍とヒカル。
ヒカルはとても足が速く、聖龍が全速力で走っても距離が縮まらない程だった。
並木道が広がる公園に走ってきたヒカルは、聖龍を巻こうと木陰に隠れた。
追いかけてきた聖龍は木陰に隠れたヒカルに気づかず、そのまま走って通り過ぎた。
聖龍の姿が見えなくなると、ヒカルはこっそりと姿を現した。
乱れた呼吸を整えながら、聖龍がいなくなったのを確認するとホッと胸をなでおろした。
が…。
ズキンと、胸に激しい痛みを感じてその場に蹲った!
走って来て乱れた呼吸に追い打ちをかけるように、胸の痛みが重なり呼吸ができないくらい苦しくなり額に汗がにじんできたヒカルは視界がグラっと霞んでくるのを感じた。
「…ちょと待って。…どうして、今? …」
痛みをこらえて立ち上がったヒカルは、霞む視界をしっかりさせるため軽く頭を振ってみた。
一瞬だけ視界がハッキリ戻ったような気がしたが、油断するとすぐに霞んできそうで、呼吸を整えながら歩き出した。