あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
「あ! いた! 」
声がしてハッと顔を上げたヒカルの視界に、戻ってきた聖龍の姿が目に入った。
どうして戻ってくるの?
そう思ったヒカルだが、また視界がグラっとなりその場に倒れそうになった。
もうだめ…
そう思ったが、ガシッと力強い腕に抱きとめられるのを感じた。
「大丈夫ですか? 」
聖龍の声が遠目に聞こえる…。
大丈夫だから…
そう言いたかったヒカルだが、声にならなくそのままスーッと意識がどこかに飛んでゆくのを感じた。
「城原さん? しっかりして下さい! 」
聖龍が呼びかけても、ヒカルはぐったりなってしまい気を失ってしまった。
額に汗がにじんでいるヒカルを見ると、聖龍は何かを思い出したかのように目が潤んだ。
とりあえずヒカルを抱きかかえ、聖龍は歩き出した。
並木道が広がる公園から歩いて5分程の場所にある、オシャレなピンク色の壁の10階建てのマンション。
最上階の10階は1フロアしかなく、一軒家のように広い部屋が広がっている。
聖龍は現在一人暮らしをしていて、このマンションに住んでいる。
駅からわりと近く便利で、実家の宗田家にも近い場所である。
倒れたヒカルを連れてきた聖龍は、とりあえず自分のベットに寝かせた。
青白い顔をしてぐったりしているヒカルを見ると、聖龍は弟の香弥(こうや)を思い出す。
香弥は4年前に交通事故で亡くなった。
聖龍より5歳年下の弟で、とても仲が良くいつも一緒に過ごしていた。
高校を卒業して大学へ進学して1年経過する頃に、駅前の交差点で赤信号を待っている時に誰かに突き飛ばされ、走ってきたトラックに引かれて即死だった。
外傷はどこもなかったが、打ち所が悪くて亡くなった。
そんな香弥は心臓が弱く、小さいな頃からよく発作を起こして寝込む事が多かった。
激しい運動をしなければ問題はないと医師からは言われていたが、香弥はいつも聖龍に追いつきたくて走って追いかける事が多く走りすぎると真っ青な顔をして倒れる事も多かった。
今のヒカルを見ていると、香弥と同じで思い出す。