あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…

「…もう少しいて下さい…」

 頬に手を添えて真剣な眼差しで見つめてくる聖龍に、ヒカルはドキッと胸が高鳴った。

「ずっと…一人で過ごしていたので、誰かがいる事が今とても嬉しくて…。もう少し、いてもらえませんか? 」
「で、でも…」
「嫌ですか? 俺となんて、一緒にいるのは」
「い、いえ。そんな事はありません…」

 どうしよう…なんで、こんなにも近づいてくるの?
 逃げたのに…どうして?

 ギュッと口元を引き締め視線を落としてしまったヒカル…。

「あの…。俺を、見て下さいちゃんと」

 え? 
 何を言い出すのかと思ったヒカルだが、ゆっくりと聖龍を見た。

 とても真剣な眼差しで見つめてくる聖龍…しかし、その瞳は悲しみでいっぱいだった。
 
 どうして、そんな目で見てくるの?
 貴方には近づかない約束をしているから…
 そう思ったヒカルは、そっと視線を反らした。

「綺麗な目をしているのですね。驚きました、赤い瞳の人を見るのは初めてですが。あまりにも綺麗なので、見惚れてしまいました。そして…好きになりました、あなたの事を…」
「はぁ? な、なにを…」

「本気です。あなたが男性でも構いませんから…俺の傍にいて下さい」
「ちょっと待って下さい! 」

 軽く聖龍を突き放したヒカルは、少し落ち着こう呼吸を整えた。

「あの。自分は、今日初めて副社長とお会いしたばかりです」
「はい、そうですね」
「自分は、仕事をする為に入社しました」
「ええ、それは十分に承知していますよ」
「なので、そんな関係は困ります」
「何故ですか? 仕事をするのに、恋愛してはいけないって誰が決めたのですか? 」
「誰が決めたって。…それはありませんが…」
「それじゃいいじゃないですか、人を好きになっても」

 そうゆう問題ではないから…。
 と、ヒカルが困っていると。

 ギュッと聖龍が抱きしめてきた。

「こんなに、人を好きになるのはもう随分ありませんでした。…3年前に婚約者が事故で亡くなって。…でも、その婚約者にもここまでの想いは正直ありませんでした。…俺が好きになる人は、みんないなくなってしまうと思って。人を好きになる事が怖かったのです…」

 ギュッと抱きしめている聖龍の腕に力が入った。
 
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