あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
(どう? 用意できない? それなら、貴方のお子さんに頼むわ。城原ヒカル…貴方の子供でしょう? )
ほう? そう来たか…。
「子供には関係ない事では? 保護司は私であり、子供は保護司ではないから」
(だって、アンタが用意できないんじゃ子供に払ってもらうしかないでしょう? )
「ちょっと待って下さい。お金を用意したとしても、それは借金になります。保護司は、貴方の養育の義務があるわけではないので。お金を貸す形になり返済計画も立ててもらう必要があります」
(あっそう。じゃあ、メールでもくれないかしら? いつまでに返したらいいのか)
「なるほど。それでしたらメールに、借用書を記載してお送りしますので。そちらのサインを頂けるのであれば、確認次第送金致しますので。先ずは貴女の番号メールに詳細を送ります」
(分かったわ。じゃあ、また連絡するわ)
電話を切ると幸樹は小さくため息をついた。
「動き出したようだね」
幸樹は口元でニヤッと笑った。
一人自分の部屋に向かったヒカル。
南向きの広い洋室に、シンプルな机と椅子、本棚、端の方にシングルベッドが置いてある。
ベッドの端に座ってヒカルは溜息をついた。
そっと唇い触れたヒカルは、聖龍にキスをされた事を思い出し赤くなった。
今日初めて会ったばかりなのに…
急に追いかけて来て…そのタイミングで発作が起こるなんて…。
「お姉ちゃん、どうして? 」
そっと胸に手を当てたヒカル…。
「あの人に近づいてはいけないから…。もう、傷ついてほしくないもん…」
一息ついたヒカルは、そのままお風呂にはいる準備を始めた。
その夜は何もなく過ぎて行った…。