あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
翌日。
今日も一日が始まる。
聖龍が出勤してくると、里菜が待ち構えていたかのように現れた。
「副社長、おはようございます」
似合わないピンクのミニスカートのワンピースを着て、髪を頭てっぺんから二つに結っている姿は若作りしすぎていて痛いほどだ。
通り行く社員達も、里菜を見てくすくすと笑っている。
「副社長。私、今日から副社長の秘書になります」
はぁ? なにを言っているんだ?
呆れた聖龍は言葉を失った。
呆れている聖龍をよそに、里菜はギュッと腕を組んできた。
「だって、私と副社長は結婚するんだもの。一緒にいるの当たり前じゃないですか」
通り行く社員が足を止めて振り向き始めた。
ここは振り払うべきか。
でも振り払ったところで居直るだろうし。
どうしたらいいのだろうか?
困っている聖龍の視界に、ヒカルが出勤してきた姿が目に入った。
あ…
ヒカルに意識が向いた聖龍は、躊躇することなく里菜を振り払った。
「副社長? どうしたの? 」
聖龍は冷めた目をして里菜を見た。
「あの、悪いんだけど。俺、女に興味がないんだ」
「はぁ? 」
「俺、実はゲイなんだ。だから、女と付き合っても上手くいかない」
「な、なにを言っているの? 」
「悪いな」
そのまま聖龍はヒカルの傍へと歩み寄って行った。
「城原さん、おはようございます」
「あ、おはようございます副社長」
聖龍はそっとヒカルの手をとった。
な、なに?
ヒカルは眼鏡の奥で驚いた目を向けた。
「何を他人行儀な挨拶しているの? 」
そのままグイッとヒカルを引き寄せた聖龍は、ギュッと腕を組んだ。
その光景を見た里菜は驚きつつも怒りを露にした目を向けてきた。
「ちょっと! なんなの? 」
ツカツカと歩いてきた里菜は、聖龍とヒカルの間に割って入ってきた。
「副社長は、私と結婚するのよ! もう、ご家族の方も公認なんだから! 」