あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
「城原さん、ただ者じゃないよね? さっき、見ていたんだ。城原さんが、あの連中を軽々とやっつけてしまう所をね」
やはり見られていたのか…。
白昼堂々だから仕方ないか。
「実は…自分は、世間で言うヤンキーの一員でしたので。喧嘩は強かったので、あの程度の連中にはなれておりますので」
ふーん…と、奏弥はちょっと冷めたような目でヒカルを見ていた。
そうそう、ヤンキーだった事にしておいた方が都合いいし。
実際、喧嘩が強いのは確かだから。
「なる程ね、喧嘩が強いってのは本当だね。でもさ、女の子が怪我してはいけないよ。傷跡残ったら、大変じゃないか」
「はい…」
「私にも娘がいたからね。娘も喧嘩が強くて、よく悪い事をしている連中と喧嘩して帰って来た事があったよ。たまに顔に痣を作っていたこともあったから、よく注意していたんだよね。弟が、身体が弱かったから護りたかったようだけど。日頃は、城原さんのようにニコニコしていてい喧嘩が強そうには見えないから。いざという時に、強さを出すから驚かれていたよ」
娘さんと重ねて見ているってこと?
私は違うから…。
スッと視線を落として目を反らしたヒカル。
「そんな娘も5年前に転落事故で亡くなったから…。なんとなく、城原さんを見ていると娘を思い出すよ」
「…そうですか…」
「でも嬉しいなぁ、城原さんと秘密を共有出来て。このことは絶対に内緒にしておくから、安心していいよ」
「はい、有難うございます」
なに噛んだ笑顔を浮かべたヒカルに、奏弥はそっと顔を近づけて来た。
え? なに?
ちょっとびっくりしたヒカルに、奏弥はニコっと微笑みかけた。