あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
メガネの秘書は?
10年後。
それほど都会でもなく田舎でもない金奈市。
一番賑わっているのは駅前通り。
電車に乗る人や、オフィスビルへ向かう人達でごった返している。
大きなショッピングモールもあって、レストラン街などもあり人の行き来が激しい場所でもある。
駅前のオフィスビルの一角に自社ビルを構える宗田ホールディング。
白い外壁に送用の上には渦上になっている煙突のような物が飾ってあり、先端には星が飾られている。
10階建てだが、1室がかなり広くて高層ビルよりも立派に見える。
1階はエントラスになっており、受け付け嬢が2人いる。
2階から各部署にわかれ、9階がカフェテリアになっていて社員食堂になっている。
お昼にはお弁当を販売したり、軽食も作られる。
中休みには社員達が珈琲を飲んでいる。
最上階の10階は、社長室と副社長室があり、赤い絨毯と茶色の壁紙に囲まれ広々としたサロンに立派な木製の机と高級素材の革張りの椅子が置いてある。
来客用にソファーはとても座り心地が良く、テーブルは大理石でできているとか。
コーヒーメーカーも置いてあり、いつでも美味しい珈琲が飲めるようだ。
大きな窓ガラスにはミラーが貼ってあり、外側からは見えないようにしてある。
日差しが強い時はブラウィンドが降りるようになっている。
現在社長は宗田奏弥(そうだ・そうや)が就任している。
奏弥は聖龍の父親で、15年ほど前に社長に就任したが、まだ聖龍が学生だったことから副社長は不在のまま一人で頑張っていた。
2年前に聖龍が副社長に就任してくれて、少しは楽になって来ているようだ。
綺麗系の優しい顔立ちで、爽やかなイケメンの奏弥は現在60代後半に差し掛かるが未だに女性からとても好感度が高い。
秘書を希望して近づこうとする女子社員も多くいるが、あえて秘書は専門の派遣会社からお願いしてきてもらっている。
今回、今まで秘書だった男性社員が急病で倒れ新しい秘書を派遣会社からお願いした。
今日からその新しい秘書がやって来た。
「よろしくお願いします」
丁寧な挨拶をしたのは、シャキッとした姿勢の良い茶色い髪を短髪に切って黒ぶち眼鏡をかけているナヨっとした男性。
170cm前後の背丈で、黒いスーツに黒皮の靴を履いている姿はただ生真面目な男性にいえる。
「初めまして、社長の宗田です」
「初めまして、城原(しろはら)ヒカルです」
声も低く太い感じで、間違いなく男性だと奏弥は確信した。
しかしなにか違和感を感じるのは何故だろうか?
奏弥はヒカルを見ていると何かが違うと感じた。
「仕事の流れはこのファイルを見てくれたら、分かるようにしてあるから。あと、隣の席を使ってね」
隣の席。
奏弥の隣には、同じように高級素材の木材で出来た机と座り心地のよさそうな皮素材の椅子があった。