あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
「城原さん、大丈夫ですか? 」
聖龍が声をかけると、ヒカルははにかんだ笑みを浮かべた。
「大丈夫です、ご心配なく…」
そう答えたヒカルだが、顔色は悪いようだった。
悔しい気持ちのまま、里菜は部署へ向かった。
エレベーターに一人乗り込んだ里菜。
「何でこうなるわけ? あれは女装でしょう? 」
悔しそうに里菜はバッグを握りしめた。
(バカね、もがけば苦しいのはアンタなのに)
声がしてハッと後ろを振り向いた里菜。
誰も乗っていないエレベーター。
後ろについている鏡にも誰も映っていない。
気のせい?
そう思ったが…。
グイッと、誰かに首を絞められる感覚を受けた里菜。
「だ、誰? …」
苦痛な声で尋ねた里菜の目の前に、また血まみれの女子高生が現れた。
(…往生際が悪い人…)
血まみれの女子高生がニヤッと笑った。
「またあんた? なんなの? アンタはとっくに死んだはずよ! 」
(え? いつ? なんで、そんなこと言い切れるの? )
「何を言っているの! アンタはもう、10年も前に歩道橋から転落して死んでいるじゃない! 」
(へぇー。私が誰だかわかるんだ)
「忘れる筈ないでしょう? アンタみたいなデブ! 」
(へぇー、デブって誰の事? )
「決まっているじゃない、神原ヒカルよ! 私の大切な人を奪おうとした…そして、大切な人のお兄さんを誘惑したデブのヒカルよ! 」
(すごいね。よく覚えているわね)
「忘れる筈ないじゃない! でも、あの時アンタは死んだ筈。即死だったってきいたわ」
(そうだけど、アンタに恨みがあるから死ねないままなんだよね。突き落としたのは、アンタだけど)
「気持ち悪いわね、死にぞこないのデブ! 何しに私の前に現れるのよ! 」
ニヤっと笑ったヒカルの姿が、だんだんと変化してスラっとした女性の姿に変わった。
「ひっ! 」