あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
殺人者の子
昼休。
今日は凜がお弁当を作ってくれた事から、ヒカルはランチテリアにやって来た。
すると。
「あ、城原さん。こちらにどうぞ」
男性社員が椅子を引いて場所を用意してくれた。
「あ、いえ。自分は…」
「いいから、いいから。こちらにどうぞ」
断ろうとしているヒカルを引っ張って、用意した席に座らせた男性社員はお茶を用意してくれた。
「今日はお弁当なのですね、ごゆっくりどうぞ」
そのまま去って行く男性社員を、ヒカルはちょっと不思議そうに見ていた。
一緒に食べようとはしないのに、場所だけ用意してくれるとは…。
そのままお弁当を食べ始めたヒカル。
周りには他の部署の社員達もいるが、特に傍に近づいたり一緒に食べようと言う人はおらず、ただ傍で取り囲んでくれているような雰囲気で。
まるでヒカルを護ってくれているような感じを受けた。
「城原さん」
ヒカルがお弁当を食べ終わる頃に、聖龍がやって来た。
「お昼食べ終わりましたか? 」
「はい…」
「じゃあ、これどうぞ」
手に持っていた缶コーヒーをテーブルに置いてくれた聖龍。
「俺もここに座っていいですか? 」
「どうぞ…」
向かい側に座った聖龍は、もう一本持っていた缶コーヒーを飲み始めた。
ヒカルもそれに合わせて、もらった缶コーヒーを飲み始めた。
「今日の服、とっても似合っていますね」
「あ…その…」
「その服は、我が社の取引先が取り扱っているメーカーの服ですね。そのデザインは、まだ売り出されていないものです。城原さんに一番い着て頂けて嬉しいです」
「そんな…」
「今朝から社員達が、城原さんに夢中です。まるでモデルさんの様な人だって、みんな喜んでいます」
それはちょっと言いすぎじゃ…。
「もういいと思います、本当の自分でいて」
「えっ…」
「ありのままの自分でいる事が、一番幸せですから」
ありのままと言われても素直になれないヒカルは、何も答えず黙っていた。