あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
あの場面を見るまでは…。
放課後。
里菜は下校する為に歩いていた。
すると、聖龍が教室に入って行く姿を見て嬉しさで覗きに行った。
放課後の教室で、聖龍は誰かと話していた。
その相手は太ったヒカルだった。
掃除をして帰り支度をしていたヒカルに、聖龍は普段見せないくらいの優しい笑顔を向け持っているキーホルダーを褒めて楽しそうに2人で話していた。
なんであんなデブに優しくしているの? 私の方がスタイルも良くて、良い体しているじゃない。
あんなデブになんで?
メラメラと里菜の腹の底から怒りが込みあがって来た。
「許せない…」
そう思った里菜は、帰り道に凛太朗を待ち伏せした。
凛太朗を使って聖龍を呼び出してもらい、近づいて体を奪ってやろうと企んだのだ。
だが、凛太朗は断って来た。
駅前の歩道橋の上で凛太朗を見かけた里菜は歩み寄って行った。
「ねぇお願い凛太朗さん、弟の聖龍さんにどうしても近づきたいの。私と話せるように、手伝ってくれない? 」
猫なで声で頼み込んできた里菜に、凛太朗は怪訝そうな目を向けた。
「話したいなら、自分で話しかければいいじゃないか。わざわざ俺が取り次がなくても、同級生なんだから」
「それができないから、凛太朗さんにお願いしているんじゃない。貴方達は双子なんだから、できるでしょう? 」
「断る。俺、それどころじゃないから」
「どうして? そんな冷たい態度をするの? 私の事、助けてくれないの? 」
「そんな事は、助けてを求める事じゃないだろう? 俺には関係ない事だから」
そう言って先を急ぐ凛太朗を追いかけた里菜。
なにを言っても冷たく突き放す凛太朗に、里菜はだんだんと怒りが込みあがってきた。
「そう、分かったわよ! 私を助けてくれないなら…死ねばいい! 」
階段を降りようとした凛太朗の背中を、勢いよく押した里菜。
急に背中を押されて、凛太朗は真っ逆さまに階段から転がり落ちて行った。
「…みんな、死ねばいい…」
まるでこの世の者を全てを憎んでいるような目をして、里菜は転がり落ちた凛太朗を見てニヤッと笑いその場から去って行った。
救急車のサイレン音を背に里菜はそのまま立ち去った。