あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
だが…。
(だからと言って、人を殺していい事はない)
そう言われた一言で、里菜のスイッチが入ってしまった。
何も分かってくれない。
また私を裏切るだけ…。
スイッチの入った里菜は颯太を殺す事しか考えなくなった。
数日後に面会に来た颯太が帰った後に、脱走した里菜は盗み出してきた包丁で颯太の胸を刺して刺殺した。
「…アンタに何が判るの! 人を殺してはいけない? じゃあ、人の体をおもちゃにして、好き勝手やる事は許されるの? それで稼いだお金で暮らせって、言われた事ある? 」
倒れ行く颯太に里菜が言った。
警察署の傍であったことから、里菜はすぐに見つかり引き戻された。
神原颯太はそのまま死亡した。
罪を重ねた里菜だが、精神状態が悪い事が明らかになり病院送りになり罪に問われる事はなかった。
それから数年後。
里菜は20歳になり回復した事から社会復帰してきた。
初めは保護司である城原幸樹が面倒を見ていた。
大検を利用して大学へ進学した里菜は、薬学の勉強を始めて薬剤師を目指したが試験に合格する事がなく一般企業へ就職していたが、点々としていた。
ゆく先々で不可解な事件が起こり、里菜とトラブルになった者が全員変死していた。
最後には自宅で焼死する事が多く、その度に里菜は転職していた。
そして辿り着いた宗田ホールディング。
「やっと会えたのよ、聖龍さんに。…運命の人に出会えたのに、邪魔されてたまるものですか…」
木漏れ日を見ながら里菜はニヤッと笑って、再び歩き出した。