あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
男は痛みをこらえて立ち上がり、再び凶器を構えヒカルに殴りかかって来た!
ひょい! と、ヒカルは男を交わして凶器を持つ手をつかみ取った。
グイッと、ヒカルは男を腕をひねり上げた。
「誰に頼まれたのか、正直に言って頂けますか? 」
何とか逃れようともがいている男だが、ヒカルの力が強く観念したかの様に項垂れた。
「千堂…里菜だよ! アンタをボコボコにしてやってくれって。100万払って頼んできたんだよ! 」
またアイツか…。
そう思ったヒカルだが、額の痛みが強くなり一瞬だけ視界がグラっとなるのを感じた。
「どうしました? 大丈夫ですか? 」
走ってくる足音が聞こえて来て、2人の警察官がやって来た。
警察官は駆け寄ると、男を取り押さえた。
「…千堂里奈と言う人に頼まれたと、その男が言いました」
と、痛みが激しくなりヒカルは額を押さえてその場に蹲った。
スーッと額から流れ落ちて来た鮮血が、ヒカルの手を通って地面に滴り落ちて来た。
「ちょっと…ヤバいかも…」
グラっと再び視界がかすみ始めて、ヒカルはそのまま倒れこみそうになった。
が…。
ふわりと、優しい腕がヒカルを抱きとめてくれた。
警察官の人?
そう思ったヒカルだが…。
「大丈夫ですか? しっかりして下さい」
かけられた声に聞き覚えがあり、霞んだ視界で見上げてみると、そこには真っ青な顔をしてヒカルを見ている聖龍がいた。
休みの日でラフな格好の聖龍は、仕事の時よりずっと若く見える。
紺色のパーカーにオレンジ系のポロシャツと紺色のジーンズに、白いスニーカー。
そんなラフな姿でも、聖龍はとても目立っている。
ここで助けられたらダメ…。
そう思ったヒカルは痛みをこらえて立ち上がろうとしたが、ひょいと抱きかかえられてしまった。
下ろして!
と、言いたかったが声にならかった。
救急車のサイレン音が近づいてきて、聖龍がそのままヒカルを抱きかかえて歩き出した。
救急車のサイレン音を聞きながら、ヒカルは助けられてはいけないと思いながらもそのまま意識が遠ざかって行った…。