あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
(愛花梨(あかり)…。自分の気持ちには、いつも正直でいればいいんだよ。叶わないなんて思わなくていいの。その人が、愛香里をどう思っていても。愛香里はずっと、その人の事を好きでいるって。決めればいいだけだよ)
それは太ったヒカルが言った事だった。
10年前。
初々しい中学生の制服に身を包んだ愛香里と言う女の子がいた。
お姫様のような綺麗な顔立ちで、長い髪をおさげに結って学校でも注目される美しさだった。
ただ愛香里は、重度な心臓病を抱えていていつも青白い顔をしていた。
激しい運動はできず、よく熱を出して寝込む事も多く成人するまで生きていられないかもしれないと言われていた。
そんな愛香里に対して5歳上の姉ヒカルは、太った大柄な女子高生だった。
体系を気にしておらず、いつも明るく元気で周りからどんなに非難されようとも平気な顔をしていた。
姉妹でも対照的で、太ったヒカルも痩せれば愛香里のような美人になるのではないか? と言われていたが、全く痩せる気がなさそうに見えていた。
愛香里は時々、姉のヒカルを学校に迎えに来ていた。
その理由は…。
校門の前でヒカルを待っている愛香里は、ちょっと恥ずかしそうにいつも俯いていた。
「あっ…」
誰かを見つけた愛香里は、頬を赤くしてそっと顔を背けた。
校門に向かって爽やかな姿で歩いて来たのは、あの凜太郎だった。
楽しそうに友達と話しながら歩いてくる凛太朗を見かけ、愛香里は目と目が合わないように顔を背け凛太朗が通り過ぎるのを待っていた。
凛太朗は愛香里に気づかないまま通り過ぎて行った。
通り過ぎた凛太朗を、愛香里はそっと見送り幸せそうな表情を浮かべていた。
「愛香里、お待たせ」
後から歩いて来た太ったヒカルがやって来た。
「お帰り、お姉ちゃん」
ニコっと笑った愛香里を見て、ヒカルは幸せそな表情をしていると思った。