あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
殺人を繰り返しながらも、精神異常である事で罪に問われず里菜は平穏な社会で暮らすようになっている事を知り、宗田ホールディングに入社する情報を得た愛香里は、里菜を自分の手で逮捕する為に姿を変え宗田ホールディングに入社した。
長い髪を短髪に切り、メガネをかけて目ただないように男性の姿で現れ、名前も姉のヒカルの名前を名乗るようにした。
「凛太朗さん…香弥さん…。仇はとってあげるから…」
そう決めた愛香里。
幸樹には本当の目的を話した愛香里は。
「絶対に、宗田聖龍さんには近づきませんので」
と、固く約束をしたのだ。
しかし。
愛香里の意思とは関係なく、聖龍から近づいて来た。
「…凜太郎さん…香弥さん…」
ゆっくりと光が差してくるのが見え、ぼんやりと辺りの景色が見えてきた…。
頭を強打されたヒカルが目を覚ましたのは、夕方になる時刻だった。
病院のベッドの上で目を覚ましたヒカル。
そのヒカルの枕元に貼ってあるネームプレート、そこには…。
城原愛香里と書いてあった。
そう。
ヒカルと言うのは姉の名前で、本当の名前は愛香里と言う。
ハッキリと意識を取り戻したヒカルは、辺りに誰もいない事を確認した。
確か聖龍が助けてくれたと思ったけど…。
ズキンと強い痛みを頭に感じたヒカル。
「気が付いたかい? 」
足音が近づいて来て、目だけ動かすと幸樹が歩いて来来るのが見えた。
「無事でよかった。脳波にも異常はないと言われたよ、でも1週間程入院して下さいとの事だから。少しゆっくり休むと良いよ」
ヒカルの手をギュッと握った幸樹は、今にも泣きそうな目をしていた。
「ご迷惑をおかけして…申し訳ございませんでした…」
力ない声で謝るヒカルに、幸樹はそっと微笑んだ。
「何も気にする事はないよ。…すまなかったね、ずっと気持ちに気づかないまま。僕の気持ちだけを、押し付けてきたようだ。君のお父さんには、本当のに申し訳なくて。君を引き取って、最高に幸せにすることが僕の罪償いだと思っていたから。君がお嫁に行くまでは、家から出て行って欲しくなかったんだ。一人になって、何かあったらお父さんに申し訳ないって思っていたから」
ヒカルは黙ったまま何も答えなかった。