あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…

「どうかしたか? 顔色が良くないぞ」
「いや…大丈夫。今日は、定時で帰るから心配しないで」
「ああ。あまり無理をしないようにな」

 奏弥は聖龍を気にかけながら副社長室を出て行った。

 奏弥が去った後、聖龍は副社長室内に設置している防犯カメラを確認してみた。
 普段仕事をしているときは録画していないが、昼休みなど長時間席を外すときや退社した後には独自で防犯カメラを回している。

 聖龍がランチから戻って来て昼寝をしている間。

 小さなノックの音がして里菜が入って来た。
 そして寝ている聖龍に近づくと、唇にキスをしている姿がばっちり写っていた。

「やっぱりアイツか…」

 キスをしている所を携帯カメラで写した姿もバッチリ写っていた。

「アイツ、写真まで写している。これは何かしかけてくるな…」

 防犯カメラを見ながら、聖龍は何度も寒気を感じていた。


 
 聖龍とキスしている所を写真に収めた里菜は、とても上機嫌で午後から仕事をしていた。


 そして15時の休憩が終わった頃。

「ん? 」

 経理で仕事をしている男性社員が、受信されたメールを開いた。

「はぁ? …なんだ? これ」
 メールを開いた男性社員が驚きの声をあげた。

 メールには。

 「宗田聖龍・千堂里奈結婚」と題してあった。
 そして里菜と聖龍がキスをしている写真が添付してあった。

「こっちにもメールが来ているわ」
「社内に一斉送信しているようだ」
「誰が送ているの? 」

 社員達がざわめき始めたのを、里菜は高みの見物のように見てクスクスと笑っていた。

 
 メールは奏弥のパソコンにも送信されていた。

「なるほど…こう来たのか。やはりあの口紅は、千堂さんだったか…」

 小さくため息をつき、奏弥は席を立って社長室を出て行った。

 
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