あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
金奈総合病院。
入院中のヒカルは順調に回復している。
ベッドを半分起こして、本を読んでいるヒカルはウトウトと心地よさそうに寝ていた。
白地に赤い花模様の可愛いブラウスに、下はラフな部屋着用のピンクのズボンを履いているヒカルは可愛い女の子そのものだ。
入院中くらい素の自分でいればいいと幸樹が持って来た着替えだった。
コンコン。
ノックの音にハッと目を覚ましたヒカル。
静かにドアが開くと聖龍が入って来た。
「こんにちは、お加減どうですか? 」
いつもの優しい笑顔の聖龍に、ヒカルは何故かドキッとした。
胸の奥のほうからジーンと伝わる想いに、今まで感じたことがない感覚で戸惑ってしまった。
病室に入って来た聖龍は、沢山置いてある菓子箱と果物の詰め合わせ、窓際には可愛いぬいぐるみも置いてあり、病室と言うよりも可愛い女の子の部屋のようになっていて驚いた。
「随分と沢山の贈り物を頂いたのですね? 」
「あ…すみません。…社員さん達が来てくれまして。あまりにも沢山頂いているので、看護師さんや他の病室の方にもお裾分けしているのですが。それでも増える一方で…」
「そっか、随分と慕われているのだね」
言いながら、聖龍は持っていた紙袋から白いカーティガンを取り出してヒカルに羽織らせた。
素材も優しくデザインも可愛くて、ヒカルにピッタリ似合っている。
「似合いますね、良かったです」
「こんなの頂けません…。副社長には、助けて頂いたお礼もまだしておりませんし…」
「ねぇ…」
ベッドに腰を掛けて、聖龍は熱い目をしてヒカルを見つめてきた。
「2人の時は、名前で呼び合うって前に約束したよね? 」
「あ…」
あの夜…。
突然倒れたヒカルを助けてくれた聖龍が、突然告白してきてその勢いかキスをして来た…。
名前で呼んでいいですか?
そう言われたけど…。
正直言って「ヒカル」と呼ばれることが、辛いから…。
「俺の名前呼んでくれる? 」
そう言われると、ヒカルはちょっと赤くなった。
「聖龍さん…」
恥ずかしそうに名前を呼んだヒカルを、聖龍はギュッと抱きしめた。
「有難う。元気が出たよ」
抱きしめていた聖龍の手が、そっとヒカルの頬に添えられた。