あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
「…分かりました。そうします…」
「本当? 」
「はい…。でも、他の社員の人にはバレないようにしますので」
「え? 別に構わないけど? 勢いで、ヒカルさんと付き合うって宣言したし」
「あれは、千堂さんを欺くために言った事ですから」
「ああ、ゲイって事ね。別にそんなつもりじゃないし、俺は隠す気はないけどね」
ニコッと意地悪そうに笑った聖龍。
「とりあえず、あと少しで退院だから。ゆっくり休んでね」
「はい」
「それから、他の人か来たら絶対にカーティガンを羽織っていてね」
「え? 」
「ヒカルさんの胸が大きい事がバレちゃうと、男子達が狙ってくるからさっ」
そっち?
なんとなく笑えたヒカル。
「あ、言っておくけど。俺はゲイではないからな誤解するなよ」
念を押す聖龍が可愛くて、ヒカルは思わず笑ってしまった。
「おい、そこ笑う所じゃないだろう? 」
「すみません…」
聖龍とヒカルが楽しそうに話している会話を、病室の外で聞いていた幸樹がいた。
「…やっぱり運命には逆らえないね。惹かれ合う者同士だから。近づかないなんて決めていても、自然と引き寄ってしまうんだね」
幸樹は安心した笑みを浮かべていた。
その後、聖龍は消灯時間までヒカルと話していた。
夕食が来ると食べさせてあげると言って介助してくれた聖龍。
ヒカルは恥ずかしそうにしていたが、こんな時じゃないと大人は誰かに食べさせてもらう事なんてないと聖龍は言っていた。
消灯時間を過ぎて聖龍が病院から出てくると、幸樹が待っていた。
「こんばんは」
「城原さん。もしかして、ヒカルさんの所にいらしたのですか? 」
「そうですが、あの子とは昼間にずっと一緒でしたので」
もしかして、一緒にいるのを見られていた?
聖龍はじっと幸喜を見つめた。
「あの、少しお話があるのですが。お時間宜しいですか? 」
「はい、大丈夫です」
「では、ちょっとお付き合いください」
車の後部座席のドアを開けた幸樹は、聖龍をどうぞと招いた。
そのまま車に乗って、幸樹と聖龍は去って行った。