あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
「聖龍君…」
「は、はい」
名前を呼ばれるとドキッとした聖龍だが、なんとなく喜びを感じた。
「君にはちゃんと教えておいた方がいいと思うから、言っておきたい事があるのけど」
「どんな事ですか? 」
「あの子の名前なんだけど。ヒカルと言うのは、実はあの子の亡くなったお姉さんの名前なんだよ」
亡くなったお姉さん?
ズキンと、聖龍の胸が痛みを感じた…。
「あの子の本当の名前は…愛香里という名前だよ。10年前に亡くなったお姉さんが、ヒカルと言う名前だったんだ」
「10年前に亡くなったお姉さんの名前を、今は名乗っているのですね? 」
「ああ、ちょっと事情があって…」
「そうでしたか。それで、ヒカルさんと呼ぶと辛そうな目をしているのですね」
「そうだね。でも、あの子が自分からお姉ちゃんとして生きると言ってきたんだ」
「そうでしたか。でも大丈夫ですよ、名前がどうであっても俺の気持ちは変わりませんから」
「それを聞いて安心したよ。あの子は、人一倍優しくて昔から正義義感が強すぎるほどだから。それでいて、本当の気持ちを隠してしまう。でも、聖龍君には心を開いているような気がするから」
「心配しないで下さい。俺が護りますから。二度と、今回のような危険な目にあわせませんから」
「私の方でも、SPをつけるようにするから。暫くの間、あの子の事をたのめるかい? 」
「はい、任せて下さい」
その後、幸樹と聖龍は他愛ない話をしながら帰って行った。
翌日。
朝の人通りの多いオフィスビル街で、出勤して来た人達が何事かと驚いて何かのビラを見ていた。
そのビラは突然どこからかふってきて、通り行き人達の元へおりてきた。
拾った人達がなんだろうとビラに目を通している。
「千堂里奈の実の母親は殺人犯…。因縁の宗田ホールディングに入社している里菜は復讐が目的? 里菜の母親は、先代の宗田ホールディング副社長・宗田翔次を殺した殺人犯の娘…」
読み上げたビラには里菜の顔写真付きで、里菜が殺人犯の娘であり先代の副社長・宗田翔次を殺した犯人だと書かれていた。
里菜が刑務所で産まれ児童施設に入れられ、親戚に家に引き取られたが親戚一家を焼き殺して次に引き取られた千堂財閥では当主と妻を殺害して焼き殺したと。
里菜の周りでは不可解な事件が多く、里菜に関わりトラブルになると不審死している者が多いと書かれていた。