あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…

 里菜への中傷ビラが配られて社内も騒然としていた。


 今日は里菜は体調不良と言って休んでいる。

「千堂さんって、なんか変な感じがしていたけど。まさか殺人犯の事もだったとは」
「驚いたけど、納得できるわね」
「確かに、あの異常さを見ていると尋常じゃないからね」
「でも、こんなビラをバラまかれて。これからどうするつもりかな? 」
「ケロッとしているんじゃない? 言われなれているようだもの」

 里菜への中傷ビラを見た社員達はそれぞれの想いで、噂話をしていた。

 一方その頃。

 仕事を休んでいた里菜は、一人ある場所へ来ていた。

 その目的は…。

 全身黒尽くしで長い髪を今日は下ろして、怪しい魔女のような目つきでじっと見ている里菜。

 その里菜の視線の先にいるのは、シックな茶色いワンピース姿に白いカーティガンを羽織て散歩をしている凜がいた。


 ここは宗田家より歩いて10分程の場所にある内木道が広がる公園。
 凜はお天気が良い日はここで散歩をしてリフレッシュしている。
 
 遊具もあり、競技場もあり、野球場もありかなり広い範囲で散歩ができ全て回ると30分以上はかかりそうだ。

 心地よい太陽を見上げながら、凜は立ち止まった。

 すると…。

 ニヤッと怪しく笑いを浮かべた里菜が現れた。

 里菜を見ると凜はハッとなった。

「いいご身分ね、自分だけ幸せになるなんて」

 怪しい目つきのまま歩み寄って来た里菜。

「あんた、塩谷さやかの妹でしょう? 血は繋がっていないけどね」
「貴女は誰? 」

「私はさやかの娘よ」
「え? 」

「さやかが刑務所の中で産んだの。誰の子供なのか判らないそうよ」
「さやかは…姉さんは今どこにいるの? ずっと探しているの。面会にいても断られてしまって、別の場所に移ってしまったようで行方が分からなくなってしまったの」

 フン! と、里菜は鼻で笑いを浮かべた。
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