あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
私は本当は何をしたいのだろうか?
気に入らない人はみんな死ねばいいと思っている。
だから、実際にそのターゲットが死ねば満足していると思っている。
でも…それで私は何を得ているのだろうか?
私は本当は何をしたいのだろうか?
フイッと視線を反らした里菜は、ギュッと唇を噛みしめた。
だんだんと込みあがる分からない感情を感じたくなく、里菜はその場から走り去った。
「あ…」
幸樹は追いかけようかどうか迷った…。
「彼女を追いかけてあげて下さい。私は大丈夫なので」
凜がそう言うと、幸樹はちょっと迷った目をしていたがそっと頭を下げて里菜を追いかけて行った。
「…きっと、彼女は分かっているわ。…本当は、寂しいのだと…」
遠ざかる里菜と幸樹を見ながら、凜が呟いた。
走って来た里菜は気づけば駅前の歩道橋の上にいた。
階段を見ると、突き落とした凛太朗や香弥を思い出す…。
そして自分が転落した時の事も思い出されて来た…。
(大丈夫ですか? しっかりして下さい)
聖龍が心配して声をかけてくれた。
(お姉ちゃん…痛い? 大丈夫だよ、すぐに救急車が来るから)
まだ幼い女の子の声が聞こえて来た。
遠い記憶の中。
うっすらと思い出された声に、里菜は何となく聞き覚えがあるような気がした。
遠い目で歩道橋を見ていると、前方から歩いてい来る男性の姿が目に入って来た。
暗い感じで頬と右の目元に火傷の跡があるが、綺麗な金色のサラサラとしたショートヘヤーで、彫り深い外国系の顔立ちをしている。
背丈も推定180cm以上はありそうな長身で、がっちりとした体形だがスラっとしている。
かっちりとした紺色のスーツにえんじ色のネクタイ、靴は高級素材の黒皮の靴を履いている。