あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
何も言わなくていいから傍にいて
数日後。
ヒカルは無事に退院して約束通り聖龍の住むマンションで、一緒に暮らす事になった。
以前倒れて運ばれた時は、聖龍の部屋で寝かされていたが今日はヒカルの部屋がちゃんと用意されていた。
マンションは4LDKで部屋数が多く、日当たりの良い南向きの部屋で聖龍と隣同士で用意された部屋はしっかり女の子の部屋に作られていた。
机や椅子はシンプルで、壁紙も白く照明器具も平凡であるが、ベッドが可愛いピンク系のシーツで枕が花柄模様のカバーでとてもかわいい。
着替えようにパジャマも置いてあり、それもイチゴ模様で子供っぽくなくオシャレである。
あまりにも可愛い部屋にヒカルもびっくりしていた。
「気楽に使ってくれていいから」
そう言われてヒカルはハッと我に返った。
「まだ怪我が完全に回復したわけじゃないから、暫くは安静にしてて」
「いえ、もう大丈夫です。週明けから、仕事にも復帰しますので」
そう言ったヒカルに、聖龍はちょっと厳しい目を向けた。
「頭の怪我、甘く見ない方がいいよ。お医者さんだって、暫くは自宅療養して下さいって言っていたじゃないか」
「ですが…」
「ここにいる時くらい、甘えてくれてい構わないよ。ずっと、気を張っていたんだろう? 誰にも頼ることができなくて、頑張りすぎているんだから。たまには、人に甘えたっていいじゃないか」
人に甘えるなんて考えたことなかった。
ずっと、私はいてはいけない存在って思っていたから。
「とにかく今はゆっくり休むんだ。もっと、自分の事を大切にしろ」
「はい…」
曖昧に小さく返事をしたヒカル…。
「俺、今からちょっと買い物してくるから。ゆっくり休んでいていいよ。何か必要なものがあれば、買ってくるけど」
「あの…」
何かを言いかけて、ヒカルは言葉を呑んでしまった。
「どうしたの? 」
「あ…いえ…いいです…。気をつけて、行って来て下さい」
フイッと視線を反らしたヒカルが気になったが、聖龍はそれ以上は何も言わなかった。
その後、買い物に聖龍は出かけ、ヒカルは少し休む事にした。