あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
ガチャッと。
玄関の開く音がした。
聖龍が帰って来たようだ。
歩く足音が聞こえてきて、ヒカルは布団をかぶった。
今、ここに来られたらちょっとやばい。
顔を見ると、きっと泣きたくなりそうで…。
コンコン。
ノックの音が大きく響いて来て、ヒカルはギュッと目をつむった。
「ヒカルさん、起きている? 」
声をかけられてもヒカルはあえて寝たふりをした。
カチャッとドアを開ける音がして、そっと聖龍が入って来た。
ヒカルはあえて寝たふりをしていた。
静かな足音で近づいて来た聖龍は、寝ているヒカルの顔を覗き込んだ。
規則正しい寝息が聞こえてくるような気がしたが、ふと、ヒカルの頬に涙の後が残っているのが目に入った聖龍はズキンと胸に痛みを感じた。
そっと手を伸ばして、ヒカルの頬に触れた聖龍。
わぁ…なんで?
でも、すごく暖かい手…男の人の手は、こんなに暖かいんだ…。
寝たふりをしている事に気づかれないように、ヒカルはそのまま平気なふりをしていた。
「…ごめんね…。一人にしちゃったから…」
はぁ? なんで謝るの?
別に、悪い事なんてしていないと思うけど…。
グッと込みあがって来る想いをヒカルは必死に抑えた。
早く行って!
ヒカルがそう思った時。
フワリと背中から包み込まれる温もりを感じ、ギュッと聖龍が抱き着いて来て、ヒカルを包み込んでくれた…。
「…愛しているよ…。だから…貴女が悲しい気持ちになると、俺も悲しくなる…。一人で泣かないで…」
なに言っているの? それは…お姉ちゃんに言いたい事でしょう?
同じ名前だから、勘違いしているだけなのに…。
ヒカルはゆっくりと目を開けた…。