あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
「…有難う…。やっと、うち明けてくれたんだね」
「え? 」
驚いた目を向けるヒカルに、聖龍は小さく微笑んだ。
「知っていたよ、だってずっと香弥が教えてくれていたから。僕の命を受け継いでくれた、尊い人だからとね」
なにを言っているの? もう亡くなっている人なのに…。
「驚いた? 俺、本当の父親の血を引いているから。亡くなった人の声が聞けるんだ。ヒカルさんが倒れた時、ここに運んできただろう? その時に、香弥が教えてくれたんだ。僕の命を紡いでくれている人だから、これ以上悲しい想いをさせないでほしいって言っていた。大きな悲しみを一人で抱えている人だから、ちゃんと護ってほしいって言われたよ。それに、心臓移植は香弥も望んだことだから。奪ってなんかいないよ」
「…どうして? …なんで、嫌いになってくれないのですか? …自分なんて…生きていても、迷惑なだけだから…」
フイッと顔を背けたヒカルは、涙ぐんだ目を見られたくなく背を向けた。
「ヒカルさんが生きていてくれなかったら、俺、こんなに人を愛することができなかったよ。今まで、確かに人を好きになって。結婚を決めた人もいたけど…ここまで愛しく感じたことはなかった…。ヒカルさんを見ていると、全てが許せるんだ…。どんなヒカルさんでも、俺は、気持ちは変わらないよ…」
何でそんなに優しいの?
(もういいから、自分の気持ちに素直になりなよ。愛香里…)
(そうだよ。幸せになっていいんだよ。その為に、僕の心臓を渡したのだから)
姉のヒカルの声と香弥の声が聞こえて来た…。
その声を聞くと、どこか安心した気持ちになれたヒカルは、ちょっとだけ素直な目を浮かべた。
「…ごめんなさい…。誰も、守ることが出来なくて…。みんな…死んでしまって…」
張り詰めていた糸がスッと切れてしまったように、ヒカルは泣き出してしまった。
そんなヒカルをギュッと抱きしめた聖龍…。