あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
被害者と加害者
お風呂から出ると、聖龍がヒカルに着替えを用意してくれた。
「これ、さっき買い物に行った時に買って来たんだ」
そう言って見せてくれたのは、優しいピンク色のふんわりとしたワンピースだった。
「こんな色…着た事ないけど…」
「着てみればいいじゃないか、きっと似合うと思うよ」
手に取ったワンピースは素材も良く、襟元に白いレースがついていて可愛いデザインだった。
とりあえず言われた通り、ヒカルはワンピースを着てみる事にした。
暫くして着替えてみると、見かけよりシックで髪の短いヒカルにもピッタリ似合うワンピースだった。
短髪だった髪が伸びてショートヘヤーになったヒカル。
鏡を見て意外に似合っている姿に自分でも驚いていた。
着替えを済ませて出て来たヒカルを見ると、聖龍は感動して目を潤ませていた。
ちょっと恥ずかしそうにしているヒカルの手を引いて聖龍は
「じゃあ、行こうか」
と言ってエスコートしてくれた。
ワンピースに合わせて靴も用意してくれた聖龍。
シンプルな白いヒールだが、背の高いヒカルが履くとちょっと大きく見える。
だが、聖龍が長身の為それほど違和感はなかった。
駅前にあるハンバーグ専門店。
聖龍はここが昔からの気に入り。
手作りハンバーグで、ソースもオリジナルでとてもジューシーな味が食欲をそそる。
ラフ過ぎずちょっとおしゃれな雰囲気のお店で、デートにもよく使われている。
窓際に座ると外の夜景が綺麗に見える。
「ここのお店、俺が小さい頃からあるんだ。リニューアルしているけど、味はチットも変わらないから。好きな人が出来たら、連れてくるのが夢だったんだ」
「え? 今まで、連れて来た事はないのですか? 」
「ああ、愛香里が初めてだよ」
「嘘…。だって、婚約していた人がいるのでは? 」
「彼女、お肉は苦手だったから。外食するのも気を使っていて、食べ物のアレルギーがあるのもあって殆どカフェくらいしか行けなかったんだ」
「それは、大変でしたね」
2人がそんな会話をしていると、注文したハンバーグが届いた。