夜這いのくまさん
たしかに騎士に所属しているというのはしっくりくる。
その恵まれた体格は騎士にぴったりだろう。ついでに気迫もあるし。

「優秀なんですね。じゃあ、どうしてここに?」

「昇格試験があって、向こうだとなにかにつけて任務に行ってしまうから団長に怒られてここで勉強しろと言われたんだ」

肩をすぼめて、おどけたように言った。彼は強面であるが、少しお茶目なところもあるようだった。

「私、騎士団ってこう戦争もないし、庶民を馬鹿にしている人ばっかりだと思ってたの。でもキース様みたいに親しみやすくて、かわいい人もいるんだと改めてしれて驚いたわ」

「かわいい、俺が、かわいい」

俺には似合わない言葉だ、と彼は呟いて顔を片手で覆った。
たしかに見た目は熊のように大きくて威圧感はあるが、笑うと八重歯が可愛く、髪は図鑑で見たライオンの鬣のようにふわふわでどこかにくめない性格は誰からも好かれるだろう。
少し話し込んだだけで本格的に暗くなってきて、彼は私の手をひいて馬に乗せてくれた。
しっかり腰に手を回して、舌を噛まない様に喋ってはいけないといって彼はマフィーを走らせた。腕が回りきらない胴はとても固くて、鍛えられていることを感じ取れた。
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