夜這いのくまさん
腐っているが彼は村長の息子だ。村人は村長の所有物。だから仮に反対したとしても、無駄なのだ。

「そうよね、あんな人と…。私ね夫とまだセックスできてないのよ」

「え?」

「儀式でアーレットがきて私を抱いたとき、今までにないくらいことさらに大事に私を抱いたの。好きだ、愛してると何度もいって。呪いよ、手酷くされていたら、アーレットが手酷くしてくれていたら、優しい夫に優しく抱いてもらって傷を癒せるのに。夫に体を触られても、アーレットが抱いてるように感じて途中で泣き出してしまうの。もう私以外の犠牲者、出したくないのよ」

私は呆然としてしまった。あまりにも、残酷に彼女の地獄は終わっていなかったことを思い知らされて。唇がわなわなと震えて絞り出すように続ける。

「夫に好きと言われても、アーレットがこちらを見ている気がするの。私は大嫌いなのに、夫にキスされ好きだと言われても後ろからいつあらわれるかもわからないアーレットに怯えている。この村はみんなアーレットの家族に脅かされ続けているんだわ。」

だから、シェリー、あなただけでも逃げてほしい。
その声は切実に望んでいる声だった。

「……シャーレイは今もなお苦しんでいるのね、私はてっきり」
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