夜這いのくまさん
もう幸せに暮らしていると思って。その後の心の傷を考えることができなかったのが憎い。
彼女は諦めたように俯きながら、少しだけ上ずった声で。
「……もう接触はしてこないと思うの。もう、儀式を超えたら私は夫に支える身だから。もしなにかあってもアーレットより強いし、拒否できるから。だからこそ、あなたが一生アーレットにいたぶられると思うと…」
一滴、彼女は涙を零した。彼女は今までのアーレットの狂気に身近に触れている人間だった。わたしは思わず、席を立って私の一番の理解者を抱きしめた。
「私は大丈夫だから」
本当にー--?
「私は強いから」
嘘つき。
「私は、アーレットだって手のひらで転がせるし、それに」
シャーレイはううう、と泣き崩れた。嗚咽は喉をつっかえ、するりと通り抜けると一緒になって泣いた。二人して力強く抱きしめた。