夜這いのくまさん
「新しい恋でしょう」
「そうだそうだ女の身体で忘れましょう」
「そういえば事務員のキティちゃん結婚したそうです」
「余計なこと言うなお前」

酒を呑むときにあそこの娼館の女はしまりが悪いなど散々な評価を酒の勢いで愚痴り、その中で一人静かに酒をちびちびと呑んでいるやつがいた。彼は情報通で色々な部署とつながっている。全く社交的でないが人から相談されたりとなにかにつけて頼りがいのある部下だった。

「失恋したまんまでいいんすか」

ぼそり、と言った。

「いいもなにももう婚約しているんだぞ」

「シェリー嬢の出身ってあの村ですよね。今度村長の息子が結婚するっていう」

ガン、と頭に強い衝撃が走った。そうかあの男、村長の息子か。身なりの整った蛇のような男だった。なら苦労することはないだろう。俺よりもいい縁談なはずだ。自分を納得させようとして肯定的に考えて全部ダメージが返ってくる。

「村の風習教えてあげましょうか?」

「え?」
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