夜這いのくまさん
入っていないが喉を鳴らして呑んでいるような素振りを見せる。随分泥酔しているようだが、こちらも酔ってしまいたかった。吐き気と眩暈が同時に押し寄せる。立っているのもやっとなほどで、握りしめた拳が青白くなった。

アーレット、という男は。
村長の息子で三歳下だ。傲慢に嫌がらせをすることが得意な男だった。
また村長の息子という立場もあって、反論することさえできないからか年を食うごとに相手への嗜虐趣味は苛烈になっていった。私はその標的の一人だった。

父親が鉱山の採掘に行っている間、アーレットは管理する茶畑を視察しに来たことがあった。隣の家のシャーレイと茶摘みをしていたときだった。シャーレイはその時もうすでに結婚が決まっており、儀式に対しても従順にしきたりということで受け入れていた。結婚の相手は仲の良い幼馴染だという。シャーレイはすぐにアーレットの姿を見ると震えだした。彼女はアーレットとも幼馴染だった。幼少期から背中にミミズを入れられたり、かぶれる草花を腕にこすり付けられたりしていたそうだ。一度抵抗した時、一緒にいっていた山に捨て置かれ、村中でみんなが探し回って見つかったとき腕が折れていた。彼女はただずっと涙を流していて、そこからアーレットの名前を出すたびに過呼吸がでるようになった。
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