夜這いのくまさん


「これでこそ、シェリーね」

迎えは直ぐにやってきた。アーレットはシェリーを見るなり、眉をひそめ「まるで毒花のようだな」と嫌味を言った。毒花とはまた言いえて妙で、小さく笑った。

「ありがとう」

今日、寝やの儀が始まるときにウサギを殺した薬草のカプセルを口に含んで一緒に死のうと思う。

なんともまあ晴れやかな気持ちだった。すがすがしく今日で終わるんだと思ったら心の底から気持ちが軽やかだった。
結婚式は村総出で行う。父親は花嫁の姿を見て、ぽつり綺麗だなと言った。
それがどういう心情か全くわからないが、父親にも思うところがあるらしかった。
そのまま黙り込んでしまった。教会まで絨毯のような草花が描かれた布の上を歩く。
屋台みたいなもので各家から自慢の料理を並べて出している。それを祭りのように好きなものを住人は選び、式を見物するのだった。

その上をどうどうと歩き、「シェリーちゃん綺麗になったなあ」「素敵ねえ」など近所の人から賛辞を送られる。
ただもうそれがきっと心からの賛美だったとしても受け入れることはシェリーにとってできなかった。
愛想笑いひとつ浮かべることはできなかった。
< 31 / 42 >

この作品をシェア

pagetop