夜這いのくまさん
目は血走っていて、ぶつぶつと呟き続ける。
その不気味な様子に彼も正気ではなくなってしまうくらいこの寝やの儀式に取りつかれているのだと思った。
覚悟を決めているからか体の震えはない。
怖いくらい冷静に自分が死ぬタイミングを待っているのだと思い知った。
着飾った衣装を全部はぎ取られると、そのまま大理石の寝台に転がされる。
ひんやりしていて、体温をどんどん奪っていくようだった。
一刻一刻、部屋に差し込む日差しはオレンジになりそして暗闇が部屋を染める。
明かりは付けないのだという。彼は寝台の端に座り込んでいて、一切目を合わせなかった。
三角座りをし、顔を埋めたまま時を待っていた。その間、私たちは一度も話さなかった。
異様な緊張感が立ち込める中、彼はぽつりと呟いた。
「……嫌いだ」
淡々と他人事のように続ける。
「お前がこの村で一番嫌いだ、二番目にシャーレイ。シャーレイはずっと泣いていた、物心を着いた時から鼻についた。なにかいうたびに泣いて俺を否定する。そしてお前も否定する。だがお前は泣かないだろう、だからお前がいいんだ。俺がなにをいっても腹立たしいくらい反論するだろう、俺はお前が嫌いだでも嫁にするならシェリー以外は考えられなかった。ずっといじめぬいてやるって」