夜這いのくまさん


「…私が泣いて逃げ出して死んだらどうするの?」

「絶対そんなことはさせない。縛り付けて、老衰まで面倒を見る」

無茶苦茶なことをいう。同情する気もないし、慰める気もないが、彼がこういった性格になってしまった片鱗が垣間見れたような気がした。それは長い付き合いだったからわかってしまう部分があったのかもしれない。

この村に生まれてなかったら、
この風習を是としていなかったら、
彼の父親が私の母を犯していなかったら、
私の父が彼の母を犯していなかったら、
私の母が死んでしまわなかったら、

私たちは結婚まではしなくともいい友人関係を築けたかもしれない。
どんだけタラればで色んな思いが溢れても、隣にいて欲しいのはキースだけだった。
いつだってかわいらしくて、安心できて、些細なこともお茶目に返してくれる私だけのくまさん。

走馬灯のようにたらればが浮かんだ。一つ一つ思い浮かんで涙があふれてきた。
会いたい、会いたい…会いたい。

「やめろ、泣くな、やめろ…!!!泣くな、泣くなったら!!」

彼は怯えたようにシェリーを見ていた。悍ましいものをみるように、信じたくないというように彼も泣きそうな顔をして。馬乗りになって私の首に手をかける。

「お前は泣かない、そうだろ!!!シェリー!!!」

オマエニコロサレルクライナラ
首に手を回し、口づけようとする。カプセルを噛み砕いて、死んで、
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