夜這いのくまさん
「俺の好いた女が慰み者のように粗末に扱われ、シェリーの気持ちを考えたことはあるのか。この村の惨状を見てどれだけ絶望したのか、鈍い俺でも感じ取れる。どれだけの女が心を痛めてきたのか、お前は見ていたはずだ」
彼と目線を合わせて、説教するように諭すようにいったキースを挑発するように、ぺっと唾をぶっかけた。
「それがこの村の業で、村全員で背負わないといけないものなんだよ!!よそ者が知った口を聞くな!!」
その怒号は部屋いっぱいに響いた。加害者であり被害者の彼はこの儀式をやり切り、変わらずにいることを選んだのだった。キースはすう、と目を細めて「救いもない」と呟いた。
「……なら、お前らの歴史を燃やす。ここがあるからそういうことをするんだ、心を病ませてまで必要な風習なんてない」
懐から取り出したマッチ棒をしゅっ、と火をつける。ぼぉとオレンジ色に灯るそれは今までみたどんなオレンジ色よりも美しかった。