夜這いのくまさん


「無理やり攫ってきてすまない」

抱き下ろした後、力が入らない私をみて強く抱きしめた。
村の出口付近の小さなしげみ。国境の境目のような場所で、彼は懺悔をした。

シェリーに置かれた状況を知らずに詰ったこと。
泣いているのに責め立てたこと。
どれもかれも後悔していると、そのままアーレットと結婚したらどれだけ後悔したかわからないとのこと。

「シェリー、俺が怖いか」

怖かった。優しくて獰猛だったことを思わされたそれでも。

「怖くない、来てくれて嬉しかった」
どちらともなくキスをした。触れるだけの優しいキスだった。
何度もちう、ちうと吸いつくように唇を噛まれて、ああ愛されるというのはこういうことなのだと悟った。遠慮がちに入ってきた舌を迎え入れたとき、そのカプセルに気づいて彼はー---どんなものかわかってしまったらしい。泣いていた。

「俺は絶対に傷つけない、だからもうこんなこと考えないでくれ」

舌で上手に掬いあげると、そのカプセルを草むらに捨てた。
そのままゆっくり押し倒される。土のひんやりした温度は人肌と似ていた。
夜風が少し冷たいから、肌を合わすと温かくて丁度いい。
耳たぶを甘噛みされて「シェリー」と掠れた声で呼ばれて肌が粟立つ。
あの真っ暗な部屋は体温を奪って、心まで凍らせるかのようだったのに。
月明りで照らしてくれた愛しい人の顔は、まるごと包み込んでくれるかのような優しい表情をしていた。
首筋に、乳房に、臍に、恥骨に、尾てい骨に、あらぬところまで触れる。
まるで猫の発情期のように小さく「みゃう」と啼いても、肯定するように触れることは病めなかった。彼のいきり立ったものをいれるとき、彼は告白した。
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