湖面に写る月の環

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『陰陽師』に『過去の視える探偵』……。僕の周りは変な奴しかいないのかと思ってしまうほど、濃い連中だ。
「まあまあ。とりあえず、本題に入ろうか」
「あ、嗚呼。そうだな」
彼の言葉に頷く。探偵少年の異様さに持っていかれてしまったが、彼も彼で驚きの発言をしていたのを今になって思い出した。
(陰陽師って主に何してる人なんだろうか……?)
最近別の用事で大変だって言ってたけど、それも陰陽師絡みなのか。
「それで、この音声を聞かせた理由なんだけど、彼女たちはこの声が最近四六時中聞こえてきているらしいんだ」
「四六時中って……それ、かなりきついだろ」
あの不快で否定的な声がいつでもどこでも聞こえてきていると思うと、想像するだけで頭が可笑しくなりそうだ。ただただ不快な音ならどうにかしようがあるかもしれないが、言葉のわかってしまう否定的な声は、精神的にくるものがある。そんなものを四六時中聞いていたら、どんな強靭な精神だってイかれてしまうだろう。
「ああ。彼女たちもかなり精神的にキているみたいでね。今は全員学校を休んでしまっているらしい」
「ええっ⁉」
一人二人ならまだわかるが、それが全員ともなれば一大事だ。僕は咄嗟に叫んでしまった口を抑え、周囲を見回す。思いのほか響いたような気がして、冷や汗が流れた。しかし、自分たち以外の客は既に帰った後だったようで、こちらを見ている人は誰もいなかった。ホッと胸を撫で下ろし、僕はちゅう秋を見る。彼は優雅にコーヒーを飲むと、探偵少年から貰ったケーキを突っついていた。あまり洋菓子は食べるイメージはなかったけど、顔を見る限り嫌いなわけじゃなさそうだ。
「最初は学校で執筆している時だけだったらしいんだけど、徐々に私生活にまで及んできてるみたいでね。最近は夢にまで来てるみたいなんだ」
「夢って……寝てる時もってことか?」
「うん。そうなるね」
彼の言葉に、僕は血の引く思いを感じた。そんなの、自分に起こったら最悪だと思う。
(無理だろ……)
夢にまで入り込まれたら、自分だけではどうにも出来ない。きっと蝕まれて痛みに耐え続けるのだろう。
「その夢は全員が同じものを見ているのか?」
「いや、結構バラバラみたいだよ。でも、共通点が一つあってね」
「「共通点?」」
「そう。――誰か一人が、必ず死ぬんだ」
ちゅう秋の言葉に、その場の空気が一気に静まり返る。ひゅぅっと冷たい風が吹き抜けた気がしたのは、気のせいか。厨房の物音や周囲の喧騒が周囲から引いていく。ちゅう秋が笑っているのが、余計怖い。
(探偵少年も全然こっち向かないし……!)
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