とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
2人がコクリと頷いたのを確認し、私はソっとキースの手をとる。
ロイにバレないよう、2人にも偽名を使うよう事前に打ち合わせ済み。
馬車の中ですでに仮面は身につけているから、とりあえず身バレの心配は多少減っているとは思う。
「じゃあ、ヤコブ。また舞踏会が終わる頃に迎えお願いね」
「わかりました。それではお嬢様、お気をつけて」
コソッとヤコブに声をかけ、小さく手を振る私に向かって、一礼し、御者席に乗り込む彼を見送った。
その時。
「…フローラ、遅いわよ?」
「ミリア…!待たせちゃってごめんなさい」
紫色のシフォン生地が何層にも重なった華やかなドレスに身を包んだミリアがツカツカと私に向かって歩み寄ってくる。
そして彼女の隣には、パートナーで婚約者のエイデンの姿があった。
「エイデン…!久しぶりね。元気だった?」
エイデン・カーター男爵。
カーター男爵家の三男で、ミリアとは幼なじみ。
そのため、私も2人が婚約する前からエイデンのことは知っていたし、それなりに仲も良い。