とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
確かに令嬢たちが噂するのも頷けた。
スラッとした長い脚を組み、壁にもたれ掛かっている姿はサマになっているし。
仮面から出ている部分でしか顔も確認できないが、きっと綺麗な顔立ちをしてるのだろうと予測できる。
「あ、あの…良ければ私と」
「ちょっと…!私が先に声をかけましてよ!」
ワラワラと群がる令嬢たちには一瞥もくれず、誰かを待っている様子の彼に私は首を傾げた。
なんか…見たことがあるような…。
その時。
パチッ。
漆黒の彼と視線が絡む。
え。な、何…?
私を凝視する男性は、次の瞬間、緩く口元に弧を描いたかと思うと、持たれていた壁から身体を起こし、私の方に向かって歩いてきた。
私はその笑い方に見覚えがあり、ゴクリと息を呑む。
ロイ・シェラード…。
隣に立っているキースの服の裾を掴み、私はこっそりと合図を送った。
キースもそんな私の様子に気づいたようで、こちらに歩み寄ってくる漆黒の男性に視線を向けると小さく息をつく。
さぁ、作戦開始よ…!