とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
少しずつ歩み寄ってくる彼から視線をそらさず、私はフッと心の中でほくそ笑んだのだった。
****
「ご令嬢、良ければ私と一曲いかがですか?」
私に向かって手を差し出し、恭しくお辞儀をする彼。
きっと、私の正体に気づいていての誘い。
私の方も声を聞いて、ロイだと確信した。
というか、私の隣にいるキースに気づいているだろうにそちらには視線を送ることさえしない。
キースも若干苛立っているのが伝わり、私は苦笑いを浮かべた。
「せっかくですけれど、私、すでにパートナーがいますので」
余裕な笑みで、私はロイ・シェラードを見据える。
負けてはいられないと毅然とした態度を崩さないように心がけた。
「そうですか…。しかし、今宵は本仮面舞踏会。無礼講でしょう。私も好みの令嬢に一曲お付き合い頂きたいのですが」
「…申し訳ありませんが、彼女は僕のパートナーですので」
再度、私に手を差し出した彼の手をキースがやんわりと呈し、ようやくロイは私の隣に立つキースへと視線を向ける。