とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜

少しずつ歩み寄ってくる彼から視線をそらさず、私はフッと心の中でほくそ笑んだのだった。
 

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「ご令嬢、良ければ私と一曲いかがですか?」


私に向かって手を差し出し、恭しくお辞儀をする彼。
きっと、私の正体に気づいていての誘い。

私の方も声を聞いて、ロイだと確信した。

というか、私の隣にいるキースに気づいているだろうにそちらには視線を送ることさえしない。

キースも若干苛立っているのが伝わり、私は苦笑いを浮かべた。

「せっかくですけれど、私、すでにパートナーがいますので」

余裕な笑みで、私はロイ・シェラードを見据える。
負けてはいられないと毅然とした態度を崩さないように心がけた。

「そうですか…。しかし、今宵は本仮面舞踏会。無礼講でしょう。私も好みの令嬢に一曲お付き合い頂きたいのですが」

「…申し訳ありませんが、彼女は僕のパートナーですので」

再度、私に手を差し出した彼の手をキースがやんわりと呈し、ようやくロイは私の隣に立つキースへと視線を向ける。
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