とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
人の話、聞いてなかったの?
私とキースは"恋仲"だってたった今、公言したのに。
まるで宣戦布告のような口づけに驚いて、私はサッと彼から身を離し距離をとった。
「キャー。素敵…!」
「禁断の恋ですわね!」
そんな周りの貴族令嬢の黄色い歓声の中。
「それではまた後ほど」
クスリと温和な笑みを浮かべ、去っていくロイ。
私はその後ろ姿を見つめ、1人考え込む。
さっき…髪にキスをした時、ロイは私だけ聞こえるくらいの声で「会場の外で待ってる」と声をかけてきたのだ。
誘いにのるのが正解…?それとも…。
「…大丈夫か?」
心配そうなキースの声が隣から聞こえ、私はハッとする。
「えぇ、大丈夫よ。ありがとう。私ちょっと疲れちゃったから他の部屋で休むわ。とりあえず婚約者に貴方をアピールする目的は果たしたしね。あとはタイミングを見て帰りましょう。アンとミリアを探して来てくれると助かるわ」
「わかった、アン達を見つけたら迎えに行くよ」
「ありがとう。じゃあ、後でね」
私はサッと身を翻し、会場の外に向かって歩みを進めた。
逃げるのは、主義じゃないし。
この際、ロイにハッキリと婚約破棄を言い渡すチャンスかもしれないわ。