とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
罪悪感に苛まれ、キュッときつく唇を噛む私に向かって。
「…フローラ、綺麗な唇に痕が残るから噛むのはやめたほうがいい」
そんな声をかけてきたロイに息を呑む。
だっていつの間にか私のすぐ側に立ち、顔を覗き込んでいたから…。
というか、いつ近づいてきたの…?
全然気配を感じなかったし。
ギョッとして、思わず一歩後ろに下がったその瞬間。
…!?
「ほら、ちょっと痕になってるぞ」
ロイの指がツーっと優しく私の唇を撫でたものだから、カチンと固まってしまった。
「な、急になにを…!?」
身の危険を感じ、私は彼から一定の距離をとる。
「…フッ。このくらいで赤くなって初心だね。婚約したら、それ以上のことだってしないとなのに」
「…っ!?」
私の反応を楽しむかのように、クスクスと余裕そうに微笑むロイ。
そして、意味を理解し、顔を真っ赤にする私。
「バカにしないで!私だって経験の1つや2つ…」
余裕綽々なロイに苛ついた私は、ついそんな見栄をはってしまった。
すると。
「へぇ?フローラってそんなに経験あるんだ?それはぜひご指南いただきたいな」
ガシッと私の手首を掴み、ニコリと不敵な笑みをこぼす彼に私は冷や汗が頬をつたう。