とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
そう呟き、遠くを見つめたロイは「ハァ…」と大きなため息をつく。
「シェス。私、アンも待たせちゃってるからそろそろ会場に戻るわ。とにかく、明日にでも騎士団に行ってキースに謝らなきゃ。一応、アンにもこの後、ちゃんと事情を話すつもりよ」
「ふーん?その後は騎士団の皆にも話すつもり?」
「…それはそうするしかないでしょうね。今までのことも、ちゃんと皆に説明しないと。キースにバレてしまったのにこれ以上隠すのは無理でしょう?」
「まぁ、そうかもね」
「…?」
なぜか少し不機嫌そうなロイの態度に疑問を抱き、私は首をかしげた。
「…わかった。とりあえず騎士団の皆に説明するのは良いとして。フローラとの婚約は絶対に解消しないから、そこはよろしくね」
そう言い放ち、爽やかに微笑んだロイに絶句する。
「なっ…!皆にバレてからも、このまま婚約続けるなんて変に思われたらどうするのよ…!そんなに婚約者が欲しいのなら私が誰か紹介して…」
「フローラ、それ以上はダメ。さすがに俺も傷つく。それに、あんまり鈍感なのもいかがなものかなと思うなぁ」
自分の顔の前に指をあて、ニコリと微笑むロイ。
「鈍感って…」
「明日は俺も騎士団に行くよ。じゃ、アンと気をつけて帰ってね」
最後にそれだけ言い残し、去っていく彼の背中を私はただ、見つめることしかできなかった。