とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
「兄さんにはともかく、私には話してくれてもよかったんじゃない?一応、フローラが男装して騎士団に所属してたのはもう随分前から知ってたし…」
ジッと私の反応を伺うようなアンの視線に私は小さく顔を伏せてしまう。
「…私が公爵令嬢だってわかれば、アンも、ハロルドもどこかできっと私に気を遣うでしょう?……それは避けたかったの」
公爵令嬢のフローラとしてではなく、騎士団では、フロイドとして皆と同じように過ごしていたかった。
ポツリと呟いた私の本音に、アンは小さく目を見張る。
そして、考え込むように。
「う〜ん…。たしかにそうかもしれないわ。気を遣わないようにしてもきっと、フロイドには、危険な仕事はさせなかったかもしれないし」
と、小さく言葉を紡いだ。
「私だって一応、騎士団の一員だし…。特別扱いはしてほしくなかったっていうのもあったから…」
だから、女であることもハロルドとアン以外には隠してたわけだし。
もしかして、ロイもそういう気持ちだったのかもしれない。
その点に関しては、分かり合えるのかなと今さらながら気づいてしまった。
「…ちなみにシェスの件は、ハロルドやアンは知ってたの?」
「兄さんはわからないけど、私は全然…。でも、兄さんって、隠し事下手だし知らないんじゃないかなと思うけど…」
フルフルと首を横にふるアンに私も「そうだね…」と肩を落とす。