とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜

「…私じゃなくても、シェラード公爵家の名前だけで嫁ぎたい貴族令嬢は多いはずなのに…。だからね、私言ったのよ。そんなに婚約者が欲しいなら誰か代わりに紹介するって」

ハァ…と、大きなため息をつく私。

そんな私に対して、アンはなぜかヒクッと口元を引きつらせている。

「フローラってば、シェスにそんなこと言ったの…?」

「えぇ。だって、そっちのほうがお互いにとっていいでしょう?私はまだ結婚したくないし、シェスは婚約者として従順なご令嬢がほしいわけだし。私が良いご令嬢を探して上げるほうが彼にとっていいかと思って…。え、何か不味かった…?」

アンが苦笑いを浮かべる理由がわからなくて、おずおずと彼女に聞き返した。

「…アハハ。シェスもちょっと気の毒だけど、私としては自分の家の権力でフローラと既成事実作ろうって魂胆は気に入らないわねぇ」

スッと目を細め、思案するようにそう呟くアンに私はコテンと首をかしげる。 

「まったく、最近の男ってどうしてこうも遠回りなアピールしてくるのかしら。正々堂々言えばいいのに。フローラもそう思わない?」

腕を組み、ブツブツと文句を言う彼女に私は「う、うん…そうね」ととりあえず相づちを打っておく。

「ま、まぁこの話はここまでにして…。着替えて朝食にしましょうか?」

「え…!いいの〜?やったぁ。昨日の舞踏会ではあんまり食べれなかったらちょうどお腹空いてたのよ〜」

私の提案に、パアッと表情を明るくするアン。

相当嬉しいのか、キラキラとした瞳で私を見つめている。

「そしたら、食事が済んだら騎士団まで送るわね。私も一緒に行くつもりよ。騎士団の皆に私自身のこと話すって決めたから…」

緊張した面持ちで言葉を紡ぐ私に対して「フローラがそう決めたなら応援するわ」とアンは優しく頷いてくれた。
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