とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
いたたまれなくなって、顔を伏せていた私はその言葉に驚いてバッと顔をあげる。
「え…?」
トーマスのそんな呟きをきっかけに…。
「たしかに。まぁ、フロイドが女の子じゃないって気づいてなかったの、キースくらいだよなぁ」
「うんうん。でも、女の子つっても剣の腕じゃ俺、全然かなわないけどな」
「おいおい。お前、それ自信満々に言うところじゃねーぞ」
「違いねぇ」
ケラケラと笑いが巻き起こる詰所内で、私のほうが呆気にとられてしまっていた。
「ふふっ。心配しなくても大丈夫だったみたいね」
「アン…」
私の肩をポンッと叩き、優しく微笑んだアンに私は小さく頷く。
「いや〜…。びっくりしたよ。フロイドがまさかキャンベル公爵家のご令嬢だったとは…」
私に向かって、歩み寄ってきたのは団長のハロルドだ。
相当驚いたのか未だに信じられないような表情で私を見つめている。
「ハロルド団長…。今まで、黙っててごめんなさい。私が女だってこともずっと秘密にしてくれてたのに…。公爵家のことは言えなくて…」
「いやいや、気にするなよ。まぁ、フロイドが俺らに言えない気持ちもなんとなくわかるし。でも、俺にとってフロイドは今も昔も、可愛い妹みたいなもんだからさ、今さら正体を知ったところでそれは変わらないぞ」